第十七章 思い出の中の悪魔 二

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 倒れている里琴を布団に寝かせると、俺は部屋を追い出されてしまった。 「守人様には、危険でしょ」  追加でやって来たのは、征伐部隊の黄野で、里琴を少し見ると仲間に連絡していた。 「兎屋に行っている」  黄野に手を振ると、階段を降りて庭に出てみた。  庭にしゃがんで蟻を見ていると、その列は不ぞろいながら長く続いていた。だが、その列に混じって金色もいて、つい笑ってしまった。 「金色……心配かけたね」  見た映像が、あまりにも酷くて、やや立ち直れない。死んだ人が悲惨な姿をしているのは、幾度も見て来たが、生きた人となると衝撃の度合いが違っていた。 「あ、大慈。どこに行った?」  衝撃を受けていて、大慈の居場所を確認していなかった。部屋に残して来てしまったであろうか。ポケットの中を探すと、ハンカチの中に、大慈がいた。 「守人様、吐きそうです……」  どうも、大慈もリンクの先を見てしまったらしい。俺が庭の隅に大慈を降ろすと、大慈は本当に吐いていた。  リンクの仕組みというのは、俺も分かっていないが、俺の場合はどこか深い場所なのか、遠い場所の光の塊にリンクしていた。熱は無いが、光が強烈な場所になる。リンクは、その光を流しているような感じであった。  では、リンクというのは別の空間に繋がっているということなのか。  大慈の背をさすってやると、大慈の吐き気が幾分納まってきた。  部屋が人の生命維持装置になっていて、多分、あの男が操作しているのだ。男を捕まえると、あの部屋が維持できなくなり、酷い状態だが生きている、数えられない程の人が死ぬということなのか。  だから犯人の男は、殺していないと主張して笑うのだ。犯人の男を捕まえた者が、ある意味では人殺しになってしまう。 「守人様、何か問題がありましたか?」  小出には、チビとばかり呼ばれていたので、守人様と呼ばれる返事ができない。 「守人様って。俺ですか?」  つい聞いてしまって、小出に苦笑いされてしまった。 「チビ助に元気がないと、心配でしょ?」  チビではないと否定しつつも、並んでみると小出のほうが大きいので、やや仕方がない。 「先ほど、兎吉屋に里琴さんという女性が来ていまして、腹にリンクを持っているのです。そのリンクが、殺人鬼の世界に繋がっていました」
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