第十七章 思い出の中の悪魔 二

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 親が諦めずに探しているので、帰してやりたいという。 「まずは、泥人形で村に連れてくる」  俺は地神丸を地面に刺して、泥人形の詳細までイメージしてみた。そこに大慈が加わり、俺のイメージをより詳細に展開してくる。  地面から浮くように、首のない泥人形が出来上がっていた。 「あの……谷津。西崎が見ていて、落ち着かないので、話し合ってくれば?」 「俺と西崎は、終わった事でしょ。小出さんは、いい人だと思うよ」  谷津はさっぱりしているが、俺の方が落ち着かない。西崎もこちらを黙って見つめていて、居心地が悪いのだ。 「泥人形が二体完成」  ここで、そそくさと兎吉屋に向かってみた。  兎吉屋では、里琴の眼は覚めていたが、泣き続けてしまっていた。自分にリンクしているのが殺人鬼を分かり、かなりパニック状態にもなっている。  ここで、リンクの事を言いたくないが、泥人形を見た里琴が、又泣き出していた。 「……思いだそうとすると、恐怖で一杯になります……でも忘れたままでいられなかった」  兎吉屋は、離れがあり、里琴を立たせると離れへと移動してみた。離れは和室で、まるで舞台のように三方の戸が外されて外が見えていた。離れは、庭の一部に部屋があるような趣にもなっている。 「里琴さん、俺達も同じモノを見て、同じように恐怖しています。もう一人ではありません」  里琴が再び、泣き出していた。  あの部屋を見てしまうと、次にリンクに触れる勇気が無くなる。でも、恐怖を克服するには、恐怖の先を知らなくてはいけない。  被害者が、生きたまま閉じ込められていると知った今、助けるしか、自分の心が救われる道もないのだ。 「被害者を助けましょう……」  でも、里琴は首を振っていた。  里琴のリンクが無ければ、犯人の所に辿り着く事ができない。  暫しの沈黙が続くと、戸が揺れて、飛び上がるほどに驚いてしまった。 「ごめん、脅かした?庭に蜘蛛を揃えていたら、ぶつかってしまった」  庭から小出が入ってくると、離れの裏側には蜘蛛で一杯になっていた。これを見てしまったら、里琴が再び気を失ってしまう。俺は、見えないように戸をしっかりと閉めると、立って誤魔化してみた。 「小出さん、頭だけから再生した事はあるのですか?」 「ないよ……」
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