第十七章 思い出の中の悪魔 二

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 谷津の出してくれた地図によると、この島には元は人が住んでいて、廃墟が数件あった。その廃墟の幾つかに、蜘蛛が密集していた。 「ここ、日本なのか」  ここで、遺体を発見した場合は、日本の警察に通報しておこう。  細いコンクリートの道を歩いていると、両側には畑の名残もあった。道は車が通るというものではなく、人と台車の道といった具合であった。  道を歩いていると、トタンの屋根が見えてきた。錆びているが、まだ完全に朽ちてはいない。 「上月、来るぞ!」  そこで、ガサゴソと草木が揺れると、犬が飛び出してきていた。その犬が俺の首に噛みつこうとしたので、黒川が真っ二つに切り落としていた。  犬は二つに切られても、まだ足などを動かし続けていた。そして、噛みつく事も諦めていないのか、唸りながら寄ってくる。 「残忍だね。噛みつくだけで殺されて、日射しを浴びて殺されて」  日射しを浴びて殺されては、何の意味があるのであろう。しかし、ただの体感であるが、肌が乾燥してきたように思う。もしかして、臓器が乾燥して、壊死すると言いたいのか。 「龍鬼神、雨」  そこで、乾燥を防ぐために、雨を降らせてみた。 「あ、雨か……いいねえ」  この男は、どこから俺を見ているのであろう。周囲を見ると、あちこちに監視カメラのようなものがあった。 「谷津、監視カメラがある」 「今、確認できた」  犯人は、廃墟を改造して住み残忍な行為を繰り返していた。 「……自宅も凄い有様だよ」  島に結界を張り、臓器の保全の他に、周囲から隔離された世界を保っていた。出入りは、里琴の腹のリンクを使用し、ここで人肉を食い生きながらえていたようだ。  島には半野生化した野菜があり、採取している形跡もあるので、自給自足の面もあったのだろう。 「上月、小出の所に行け!」  黒川の前に、黒い物体が来ると、猿に似ていた。しかし、顔が妙に人間のように見える。 「知識を持ったサルだよ」  上から声がしているように聞こえた。そこで、黒川が戦闘している間に、屋根の上に登ってみた。屋根は、足で抜けそうな脆さであり、天辺以外にはいられない。 「黒川さん、後ろにもサルもどき」  俺の声に、猿が俺を睨んでいた。奇襲に失敗して、恨んでいるのかもしれない。 「切っていいのかな、サルなのかな、ソレ……」 「上月、この地は日本だと分かった。もう犯人を殺してもいいよ」
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