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五十鈴が俺を詮索しないのは、俺に両親がいないと知っているせいもある。両親は事故死だとしか言っていないのだが、深い事情があると思っているのだろう。確かに、深い事情があるが、村の者ならば皆知っている事であった。俺の両親は、生贄になって死んでいる。それは、こちら側の世界の住人には理解出来ない事情であろう。
五十鈴と並んで歩き出すと、あちこちから声が掛かってくる。俺は、目立たないように生きているので、やはり五十鈴との登校は避けたい。そっと、先に行こうとすると、五十鈴も早歩きになっていた。
「上月、置いていくなよ」
「五十鈴といると、目立つから嫌だ」
そこで、五十鈴が苦笑いしていた。
「あのな、上月の方が目立ちまくっているけど、皆、声を掛けられないだけだけど」
俺は、走るように歩くと、大学の門を潜った。
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