第三章 千年時計 三

3/9
前へ
/210ページ
次へ
 やはり気になっているのは、直江津で、何故、今現れたのであろう。直江津は、二十年間の記憶も持たずに、しかも、こちらの世界で彷徨っていた。  それと、直江津の妻とはどんな人であったのだろうか。  大慈が俺の指を踏みつけ、講義を聞けと言っている。俺も学生なので、しっかり勉強しなくてはいけないだろう。そこで、暫ししっかりノートを取ったが、又、気になる事を思い出してしまった。  古参の×だった直江津は、崩壊の可能性があっても、暴走の可能性は無かった。では、やはり、暴走したのは生徒であったのではないのか。  やはり、直江津と兎屋に行って来よう。  ノートに兎の絵を描いてしまったので、大慈に俺が集中していないとバレてしまった。 「……守人様、今度、村の図書館に連れて行ってください」  消しゴムを椅子にして、大慈が見上げてきた。大慈もミイラのままなので、もう少し水分を与えてやりたい。その前に、布を巻きつけているだけの服を、ちゃんとしてあげたい。大慈の服は、紗英に頼もう。 「……村で発生した事件を知りたいです」 「……分かったよ」  しかし、村の図書館など、どこにあっただろうか。学校には図書室はあったが、文学しかなかった気がする。  そこで、講義が終わったので、移動しながら旗幟を見つけた。 「旗幟、紗英さんに大慈の服を頼みたいのだけれど」 「そうだね。ボロボロだものね……姉さんに言っておくね」  そこで、旗幟に又事件に関わっているのと責められてしまった。 「慧一さんも、姉さんも心配するから、程々にね」  しかし、旗幟は携帯電話を取り出すと、俺の話を聞こうと構えていた。最近、分かってきたのだが、旗幟も結構、野次馬の性質があった。それに、検索マニアに近いものを感じる。  俺は、五十鈴が他の人と話しているのを確認すると、階段の踊り場に身を隠す。 「……二十年前に失踪していた、直江津という小学校教師。十六人の小学生を喰ったとされる」 「その人を捕まえたの?」  俺は、頷きながら、直江津の記憶がなく、真実が分からない旨を伝える。状況からは、生徒が暴走した可能性が高い。直江津は、生徒を庇ったのであろうか。 「その事件は知っている」  どうして旗幟が知っているのであろう。すると、村の事件史というデータを見せてくれた。そこには、過去の事件を捜査しているメンバーとの交流があった。
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加