第三章 千年時計 三

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 理科準備室から出て、階段を降りると、音楽室がある。そこで犯人は生徒を殺し廊下に出た。音楽室からは、物音か叫び声がしただろう。教室にいた生徒は、異変に気付き原因を確かめようとする。  そこで、教室から出て来た生徒は、血塗れの何かを見る。もしかして、その人物は廊下を走ってきた。玄関に逃げるのではなく、生徒は教室に入り、鍵を閉めようとした。  そして、教室で殺される。  犯人は外に向かい歩き、子供の声を聴く。その方向に向かって歩き、体育館への通路で、再び殺し外に出た。  何故、子供を殺したのだ。もしかして、この犯人は、理科準備室から逃げた子供を追っていたのか。 「……生きている生徒が、何かを知っている?」  犯人が外まで追ったのならば、誰かが外に逃げたということだ。ここには、他の先生もいて、犯人は長居をしていない。  そこで、この時の生徒で、生き残っている生徒を検索してみた。すると、半数が生き残っていた。  まず、スポーツ等で選手になっていた生徒は、そちらの活動が優先され、吹奏楽に参加していなかった。  そして、子供の安否を確かめるために来た親と、子供を照合してゆく。子供が家に帰っていれば、心配して学校には来ないだろう。 「……一人、いる」  佐川 祭(さがわ さい)。吹奏楽には参加しておらず、しかし親が駆けつけて来ていた。成長が速く、この時点で身長が百八十センチメートルほどあった。バスケットの選手であったので、試合間近で、親も学校に居た事に不審を抱いていない。しかし、残って練習していたバスケットのメンバーには、六年生がいなかった。六年生は、練習を早めに切り上げて帰ったのだそうだ。  しかし、佐川を探してみると、既に老衰で亡くなっていた。そのまま、成長が止まらなかったらしい。 「亡くなったのか……」  でも、佐川は何か知っていたのではないのか。知っていたならば、きっと誰かには喋っている筈だ。そこで、佐川の飲み友達を探してみた。 「村に行ってみよう」  佐川の飲み友達が、市役所に勤務していた。  俺が大学の授業を終えて家に帰ると、李下が直江津を村に運ぼうとしていた。 「李下さん、村に行くのですか?」 「ああ、市役所の者が来るので一緒に行ってくる」  李下は、直江津を市役所の立ち合いの元で、警察に引き渡すという。でも、やはり李下も真相が気になっていた。 「御影屋はあったのですか?」
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