第三章 千年時計 三

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「いや。閉店していた。でも、自宅で時折、商売していると聞いた」  そこで、市役所の職員と、警察も一緒に御影屋の元店主に会ってくるという。 「俺は金曜日に村に行ってきます。李下さん、御影屋の結果を教えてください」  俺も御影屋に会ってみたいが、これから村に行くというのでついていけない。俺は、これから喫茶店ひまわりにバイトに行き、その後は光二とチェンジしなくてはいけない。 「まあ、分かった事は教えるよ」  李下は、直江津と部屋を出て行ってしまった。  俺はシャワーを浴びて着替えると、喫茶店ひまわりに行く。今日も、志摩があれこれ仕事を片付けてくれていた。  俺は定食をセットすると、客に渡してゆく。そして、汚れたテーブルを拭いて、次の客に備える。  カウンター席で本を読んでいる人がいると思ったら、谷津であった。谷津の住んでいる家は、ここから離れているので、早く帰った方がいい。 「谷津、早く帰れよ」 「飯を作るのが面倒なの。ここで、食べて、弁当を買って帰る」  どうも、他の村と繋がる窓を持つ部屋は、西崎が兎屋にいるせいもあって、雪村に取られたらしい。 「……小田桐さんと相談してね。住居を交換しようかと思っている」  小田桐は、この屋上に住んでいるが、通勤が車で駐車場に困っているらしい。トラックなどでも帰ってくるので、駅前の駐車場が使えなくなったりしていた。  そして、小田桐と一緒に住んでいる八重樫は、続く試験でへとへとになり、電車に乗ると眠ってしまうらしい。そこで、小田桐は八重樫の送迎もしていた。 「八重樫が、あっちの家に住むってこと?」  それは構わない。 「ダメか?」 「いや、家賃さえ払ってくれれば、誰でもいいよ」  八重樫と小田桐で、一部屋ずつ借りるらしい。他に横の土地の駐車場も借りる。 「雪村さん、怒りそうだね……」 「それは平気。雪村さんは窓の管理だけで、ほぼいないから」  しかし、この屋上の八重樫の部屋というのは、蔵であった。中身は改装しているが、ハイテクとは言い難い。 「又、上月と近所ということだね」  でも、まだ引っ越ししていないので、谷津は電車で帰って行った。  八重樫は、あれこれ問題を増やしてくれるので、離れていた方がいい。八重樫が引っ越す事には、問題がない。でも、谷津も問題児であるので、何か嫌な予感はする。
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