第三章 千年時計 三

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 俺は、俊樹と交代する前に、喫茶店ひまわりの仕入れを確認してみた。すると、俊樹がきちんと管理して注文していた。本当に俊樹は、こちらの世界では有能で頼りになる。×の能力の評価は、村でも見直した方がいい。 「上月さん、交代します」 「分かった。お先に」  俺は部屋に帰ると、僅かな時間を利用して、端末を出してみた。すると、既に谷津がコメントしていた。 『殺した人数は合っていた。でも、御影屋は殺された状況が分かっても、殺した人は分からない』  御影屋は、生徒は日本刀で首を刎ねられたと言った。その日本刀も一本ではなく、四種類になっていた。犯人は、切れなくなると、取り替えながら切り進んだらしい。 「でも、これで犯人は直江津さんではないと分かったでしょ。直江津さんは、刀を使用しない」  刀など持てばいいと思うかもしれないが、一刀で首を刎ねていくには、慣れと技術が必要であった。普段、日本刀を扱っていなかった、直江津には無理であっただろう。 『直江津も一度殺されていると、御影屋はコメントしている』  直江津の記憶がないのは、仮死にされ治療されていたせいらしい。市役所の職員が改めると、直江津には大きな刀傷の跡があった。 『刀傷を見ると、直江津は号泣していた』  その刀傷に意味があったのだろう。多分、妻の手にかかり、直江津は一度殺されたのだ。 『まあ、市役所と警察が直江津の処分を決めるでしょ』  そこで、時間になってしまったので、光二にチェンジしてしまった。光二は、端末の電源を切ると、着替えを始めた。 「守人、あんまり、危険な事に関わらないでね」 『そうする』  俺は、光二の中に入ると、心臓を目指してみた。しかし、今日は蛇がいない。蛇がいないということは、光二もどこかを痛めているということだ。 『光二、どこか痛いの?』 「守人のせいで、胃が痛いよ。まあ、直江津ではなくて、谷津のせいだけどね」  そこで、胃に行ってみると、蛇が糸を吐き補修していた。  光二は、谷津が又近くに住むと聞いて、胃が痛くなったらしい。 「谷津は、守人が信頼しているからさ、余計に厄介だよね」  光二の胃が痛くなるほど、俺は谷津を信頼していないだろう。 「昔もさ、志摩はともかく、谷津が守人の傍にいると、教室がざわついていたしね」
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