第一章 千年時計

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 掟破りの李下という異名を持っている李下は、主に村の掟を破った者を喰らい、その代わりに、意識のない状態で生きている娘の処刑を止めていた。  李下が見えない場所だが、自分の刀を出したとうことは、×が潜んでいるということだろう。でも、俺には殺気は感じなかった。 「李下さん、敵ですか?」 「赤い月は、死者を呼ぶというからね。闇が強くなっている分、守人様の光が遠くからでも見えてしまう……」  李下が刀に手を添えて、どこかを睨んでいた。俺も李下の見る先を確認しようとしたが、李下の後ろに下げられてしまった。 「李下さん……」 「上月、下がって!」  赤い月に、人影が浮かんでいた。  今、オープンテラスの鍵は開けていないので、勝手に入った者になる。俺がドアを開けて出ようとすると、李下が止めていた。 「掟破りを喰らうのは、私の仕事なのでね。上月は中にいてください」  見ただけで、掟破りと分かるものなのであろうか。しかし、俺が鳴っていた携帯電話を見ると、画面に警告が出ていた。その警告は、谷津(やつ)からで、近くに人を幾人も喰らった殺人犯がいると知らせていた。 「谷津、あれは誰?それと、先ほど、あれが俺に道を聞いた時には、警告していなかったよね?」  谷津は、機械に強い×で、俺の幼馴染であった。今も勝手に俺の携帯電話を遠隔操作していた。 『だから、これも万能ではないの』  谷津は、俺に道を聞いた時から、あれをマークして調査していたらしい。しかし、谷津も学生であり、時間に制限があったのだ。  李下は煙を出して、一般客から屋上庭園が見えないようにしていた。その煙幕のせいで、俺も相手の姿がよく見えなかった。 『相手は古参の×で、直江津(なおえつ)という名前だ』  姿はよく見えなかったが、俺に道を聞いた人と同一人物であったと思う。しかし、俺も守人様ではあるので、見た目で人を判断していない。道を聞かれた時は人であったが、今は人とかけ離れた存在のように感じた。  客が来てしまっているので、李下は気になるが定食を出さなくてはいけない。こちらの世界では、×は異形のもので、認知されてはいない。 「いらっしゃいませ!」  客の相手をしながらも、どうにも屋上庭園の方が気になる。谷津も自宅でレポートを仕上げていたというが、直江津を詳しく調べてくれた。 「崩壊寸前の×なのか」
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