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駆けださないように注意しながら、タラップをのぼっていく。タツオの視界に閲覧席にそろった将軍たちの姿と無数の勲章が見えてきた。失礼にならないようにあまり視線を動かさず、桐島元帥を探した。閲覧席から指揮所を見おろすテラスに小柄な元帥が立っていた。
軍人が優秀かどうかは、立ち姿を見ればわかるという。その老人は片手を手すりにかけて、ただ自然にまっすぐ立っているだけで、あたりを払う威厳を放っていた。
タツオは元帥の数歩手前で立ちどまり、最敬礼をしていった。声は張らずに落ちつかせる。
「逆島断雄少尉です。お目にかかれて光栄であります」
桐島元帥は振り返るとしみじみとタツオを眺めた。
「貴様が逆島靖雄中将の息子か。まだ赤子だったころ、この手で抱きあげたことがあるぞ。母上はお元気か」
タツオは直立不動を崩さなかった。
「はい、逆島の家をひとりで元気に守っております」
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