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呼びだしのベルがほぼ同時に鳴る。 背の君が立ち上がると、男を制して男の分もすっと取った。 「すんません。よろしくお願いします。」 背の君の意図を汲んだ男は素直に従った。 「あの。なんで時代小説だったんスか?俺、てっきり女性作家の恋愛小説あたりかと…」 「時代劇のお仕事、いまのところないでしょ?そのうち入ってもいいように今のうちからなじんでおいたほうがいいかな、って思ってね。でなきゃ時代小説に触れる機会もないんじゃないかなって。でも、短編集にしたらよかったわね。配慮が足りなくてごめんなさい。」 「あぁ…そうか。ありがとうございます。ってか、姐さんの作品じゃなかったなって。」 「あたし?基本は脚本家だし、本のほうは売れないどころか出版してるの?レベルだからね。まぁ、せいぜいあなたに出演してもらえるような作品書くわ。」 …言ってからしまったと思った。 いまやこの男に出演してもらおうとしたら、超大物脚本家になるかベストセラーにでもなんなきゃとてもじゃないとムリだろ。自分でハードル上げてどーすんだ? 深いため息を呑みこんだ。
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