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背の君が戻ってきた。 三人前を一人で運んでくるとはたいしたものだ。 三人とも、ほぼ無言で食べる。 コシが異常なまでに強い麺にやわらかなキャベツが絡み、イカと豚がこっそりと隠れている。 見た目は確かに焼きそばだけど、そのイメージからはかけ離れた食感がたまらない。 独特の風味を醸し出している肉カスもいい。 焼きそば、というと見た目は確かにそうなんだけど、そうじゃない。 名物にうまいものなしと聞いたことがあるけど、これは癖になる。 そんなことを思っているうちにすっかり平らげてしまった。 やはり平らげてしまった背の君が小声でささやいた。 「俺らが買い物をしている間、どーする?」 「館内を見物するか、ここにいるわ。」 「そうか。わかった。じゃ、あとでここに集合な。」 買い物があるという男に連れのカモフラージュを頼まれた。 何を買うのかと思ったら、パンツだった。 ズボンじゃなくて、下着のパンツ。 そうなると私は適任じゃない。 背の君に話したら快くOKしてくれたので決まった買い物旅行だった。 都内じゃ目立ちすぎるから、失礼ながらこんなところにいるわけないよね?な地方都市を選んで。
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