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男は背の君とともに、いろとりどりのパンツが大量にぶらさがっている売り場へ入って行き、二人で何やら上から下まで探し回っている。
形や色だけでなく縫ってある位置なんかまできっと何かこだわりがあるんだろう。
背の君からもちょこちょこと注文あるしな。パンツの。男子には男子にしかわからないフィッテング感があるのだろう。こだわりがあるということまでは理解できるがその違いは全く理解不能だけど。
まぁ、たしかに20代後半に射止めた朝ドラの脇役で大ブレイクして、いまや仕事の切れ目のない男、小野悟ともなるとパンツなんて買えないよなぁ、おいそれとは。
それでも選びたいとなるとこうやってカモフラージュを頼むしかないのか…
売れたら売れたで大変だなぁ…
小野悟が大学在学中に演劇サークルの舞台脚本を頼んできたときからだから…かれこれ…10年以上の付き合いになるのか。
なんてつらつら考えながら歩いていたら、売り場を少し離れたところで血相を変えて左から飛び出してきた3人の女性グループとぶつかりそうになった。
ん?もしや…
「ねぇ、あなたたち。もしかして【エイジさん】みた?」
私の言葉にピンときたのだろう。
お互い顔を見合せた3人の気迫に圧されそうになる。
彼女たちが気づいたであろう【エイジさん】
あの男が朝ドラで演じていたドラマの役名だ。
「あなた見たの?タイムラインに小野悟そっくりさん発見!まさかの本人?!とかあったから来てみたのよ。」
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