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 クソ親父とは、僕の父親のような男を言うのだろう。  鈍色のつなぎを着て出掛けたと思ったら、数週間後には、ジーンズに藍色のジャンパーという格好に変わり、また数週間後には、焦茶色のつなぎを着て帰って来た。  服装をコロコロと変えて、ようやくスエットで定着したと思った矢先、父親はあまり家に帰って来なくなった。  そうして、しばらく見ていないなあと思い始めた頃になると、酒臭い息を僕の顔に吹きかけ、母親からお金を貰う為だけに帰って来るのだ。  僕と母親・・・と、時々父親、が暮らしていた木造アパートは、父親が居る日も居ない日も、部屋中、強烈な煙草の臭いがした。  空間に染み付いた煙草の臭いというのは不思議な物で、30分くらいその場所に居続ければ、意外と慣れる・・・というか、諦める事が出来る。  だけど、外から帰ってきて、玄関のドアを開けた時の臭いだけは、何度繰り返しても気持ちが悪く、一瞬にして不快な気持ちになった。  そして、それはそのまま、僕の父親への感情だった。
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