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 どうして父親は、母親と結婚出来たのだろう。この事は、23歳になった今でも謎のままだ。  僕の母親は、不甲斐ない父親とは不釣り合いすぎる程・・・(逆に釣り合いが取れているとも言えるのかもしれないが)、働き者で、優しく、聡明で、とても綺麗な人だった。  僕は、お小遣いを貰ったこともなければ、家にサンタクロースが来たこともなかったけれど、そんな自慢の母親のおかげで、自分を惨めだと思ったことは、一度もなかった。  小学五年生の、あの時以外は・・・。  それは、お正月の事だった。アパートで母親が作ってくれた磯辺焼き1個を食べ終えた僕は、母親から、生まれて初めてお年玉を貰った。  ずっと、母親に無理をさせてまでお年玉なんて要らないと思っていた筈なのに、封筒(ポチ袋ではなく、使い回しの茶封筒だった)を見たら、僕は嬉しくて堪らなくなった。  中身は手触りですぐに分かったけれど、それでも、封筒を開ける時は、物凄くワクワクした。中には・・・大きな丸い硬貨が、一枚。  「これだけでごめんね」  僕が封筒を開けると、母親はすまなそうに笑った。それは、初めて見る顔ではなかったけれど、僕は、胸をどん、と突き飛ばされたような感覚がした。  「・・・・・・あげる」  気付いたら僕は、母親から貰った五百円玉を握りしめると、そのまま母親の前に差し出していた。  子供は素直に喜んで貰う方が、母親も喜ぶのだという事を、当時の僕は、知らなかったのだ。  母親に喜んでもらいたい。僕は、その一心だった。
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