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そうだった、と、神崎は頭をかく。『叢雲』の事件でアキラが手に入れた情報を、経緯を含め文書にしてくれるように頼んであったのだ。
「わざわざ、来てくれたのか……所轄署に取りに行ってもらうか、俺が出向いて受け取るかするつもりだったんだ」
「ついでがあったんですよ。今日は報道部にいる佐野の叔父さんに、会いに来たんです」
「ああそうか、石井さんだね。そちらの用は、もう済んだのかい?」
アキラはメモリースティックを、神崎に手渡す。
「佐野は、まだ報道部にいますけど俺の用は済んだので……先に帰るつもりです」
佐野と石井氏には申し訳ないが、鷺ノ宮と顔を合わせたくない。報道部に戻らずにアキラは、帰ろうと思っていた。
「何だか悪かったなぁ。俺に時間があれば署内を案内してあげるんだけど、生憎これから成田空港までアメリカに研修に行ってた先輩を迎えに行かなくてはならないんだ」
「成田に? 俺も友人を迎えに夕方、成田に行くんですよ」
「何時の便だい?」
「十八時三十分着です。」
神崎は「なあんだ」と言って、笑った。
「俺の迎えの便と、そう時間が変わらないな。良かったら送っていくよ。都合、悪いかい?」
「神崎さんの車ですか? それとも警察車両ですか?」
「パトカーに乗りたいのかい? 残念ながら、警察車両だがパトカーではないよ」
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