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時間があれば県警内にある道場で柔道の稽古をしているその体格は、神崎よりも機動隊員の制服がむしろふさわしくさえあり、いつものだらしない格好よりはすらりとした長身とがっちりした体格を際だたせていた。
しかし常に危険に身をさらし、まるで死に急いでいるように見えるのだ。
相通じる所など何もないはずだった。
それでも鷺ノ宮とアキラは同じ匂いがするのだ。
喩えて言うならば、それは硝煙の匂い。生死を分かつ、現場の匂いだ。
その正体を神崎は、知りたいと思った。
「成田に迎えに行くのは、海外の友達かい?」
「ええキューバの友人で、何時もコーヒー豆を送ってくれている人ですよ。今度、日本の商社と取り引きすることになって商談に来るんです。今夜は成田にホテルを取ったから、泊まりに来いと言われて……久しぶりだから、ゆっくり話したいと言うんですよ」
神崎は、写真部で出してもらった美味しいコーヒーの甘い香りを思い出した。
「そうか、あのコーヒーは確かに旨かったな。店頭で手に入れられるようになるのか」
「神崎さんになら、いつでも俺が送ってあげますよ」
めずらしく、屈託のない笑顔だ。
その少年らしさに、神崎は今考えていた懸念は間違いなのかもしれないと思う。
「ところでその人はどういった友人なんだい?」
だがその笑顔は神崎の言葉にすっと、冷笑的なものに変化した。
「うーん、職務質問ですか?」
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