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〔2〕
『叢雲学園高等部』写真部三年のアキラが同じ部の友人である佐野和紀と一緒に県警報道部を訪ねた理由は、在籍する佐野の叔父の同僚に来春受験する大学出身のカメラマンがいると聞いたからだ。
同じ大学を受けると知った佐野がアキラを誘ったのだが、アキラの興味は報道部のカメラマンよりどうやら県警本部の見学にあるようだった。
「お前も写真、続けるつもりなんだろう?」
受付で用件を述べ、叔父が来るのを待つためにロビーの長椅子に座った佐野は、当然のようにアキラに言った。
「うーん、そうだなぁ。」
しかしアキラは、曖昧な返事を返しただけだ。
一年生で佐野が写真部に入ったとき、アキラは活動熱心で後輩に好かれる二年生部員だった。
訳あってアキラが留年しなければ、友人関係を築いていなかったかもしれない。だが、この不思議な雰囲気を持つ友人を佐野は、誰よりも大事に思っていた。
飄々として達観した位置から他人に接していながら何処か不安定で、放っておけない。いつでも、ふらりと行方が解らなくなりそうな男だ。
「最近あまり、カメラを持たないんだな」
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