【第1章 アキラ】

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 さほど待たずして佐野の母方の叔父、石井が受け付け横のロビーにやってきた。  小柄で人の良さそうな三十代半ばの男性で、カジュアルだがきちんとジャケットとネクタイを付けていた。  事件記者に、むさ苦しいイメージを持っていたらしいアキラが意外そうな顔をした。 「やあ、君が須刈君だね。初めまして、こいつの叔父の石井武彦です」  その表情から自分に対しての印象を察したのか、石井はにこやかに右手を差し出した。  遠慮がちにアキラは、その手を握る。 「和紀から君のことは良く聞いているよ、一度会いたいと思っていたんだ」  おしゃべりな佐野が、どのような話をしているか予想がついたのだろう。アキラは苦笑した。 「自分はただの高校生です。ダブリですけどね」  石井は声を立てて笑った。  破顔の彼は、誰からも好感を持たれるようなタイプだった。
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