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さほど待たずして佐野の母方の叔父、石井が受け付け横のロビーにやってきた。
小柄で人の良さそうな三十代半ばの男性で、カジュアルだがきちんとジャケットとネクタイを付けていた。
事件記者に、むさ苦しいイメージを持っていたらしいアキラが意外そうな顔をした。
「やあ、君が須刈君だね。初めまして、こいつの叔父の石井武彦です」
その表情から自分に対しての印象を察したのか、石井はにこやかに右手を差し出した。
遠慮がちにアキラは、その手を握る。
「和紀から君のことは良く聞いているよ、一度会いたいと思っていたんだ」
おしゃべりな佐野が、どのような話をしているか予想がついたのだろう。アキラは苦笑した。
「自分はただの高校生です。ダブリですけどね」
石井は声を立てて笑った。
破顔の彼は、誰からも好感を持たれるようなタイプだった。
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