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鷺ノ宮の視線は、内面を射抜くような鋭さがあった。
「カッコいいもんなぁ、戦場カメラマンは。やっぱり死線をくぐって遠い国の悲劇を感動的に伝えることに憧れたりするんだろう? でも現実は甘くないぜ。望遠レンズをバズーカと間違えられて味方から砲撃されたり、民間人だと思って怪我人を助けようとしたら、いきなり腹に鉄の玉をもらったり……」
「そういうの、俺はゴメンですよ。痛い思いするのは厭だし。正義に憧れてた頃もありましたが、今はもう、目の前の現実の方が大事ですから」
「ふうん、…生意気なこと言うガキだなぁ」
二人の間に、緊張した空気が漂った。
「なんだ鷺ノ宮、学生相手に絡むなよ。すまないね、須刈君。こいつは大学時代に中東でカメラマンをやってて死にかけたことがあるんだよ。そのせいか報道カメラマン希望者には必ずこう言って絡む悪いクセがあってね」
「はあ、別に俺は報道カメラマンになりたい訳じゃありませんから……」
アキラは石井に笑顔を返す。
「ああ、そうだ佐野。俺ちょっと神崎さんの所に用があったんだ。そっちに行ってもいいか?」
「いいけどさ、大学の話、聞かないのか?」
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