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〔4〕
報道部を後にしたアキラは、ふと立ち止まり考えた。
署内に捜査一課の刑事である神崎が居る確証は、何もない。だが、あのカメラマンにこれ以上絡まれるのも面倒だった。
灰色の長く暗い廊下を歩きながら、漠然とした苛立ちを頭から拭い去ろうとする。
しかし、鷺ノ宮の言葉が小さな棘のように神経を逆撫で、その存在に対する腹立だしさが抑えられなかった。
馬鹿馬鹿しい、と、アキラは自嘲気味に笑う。
どうでも良い、深く考えるな。それ以外に自分を保つ方法はないのだから……。
報道部のゲストプレートを付けているとはいえ、一人でうろうろと歩き回るわけにも行かない。取り敢えず受付に戻り神崎を捜してみようと、アキラは踵を返した。
受付の婦警が、にこやかに刑事課に問い合わせてくれたので、幸いにも署内にいた神崎が直ぐにやってきた。
「やあ、アキラ君。俺に何か用かい?」
神崎は親しみを込めた笑顔で、アキラを名前で呼んだ。
「お忙しいところ、申し訳ありません。先日頼まれた事件資料を纏めてきましたから、直接お渡ししたくて」
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