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無言で茶碗を受け取って、おかわりをよそってやる鈴音だったが、
「イヤーなんでだろ。最近すっごく腹がへるんだよな」
秋哉は一時も待てないという風に、手近なおかずを箸でつまんで口に運ぶ。
「育ちざかりだからだな」
自分で不思議がって勝手に納得して、ついでに冬依の納豆に手を伸ばして、あっという間に小鉢を空にした。
納豆は飲み物だとでも言わんばかりの勢いだ。
そんな調子で、続けざまにどんぶり茶碗に飯を4杯たいらげると、
「ごっつぉーさん。んじゃ、行ってきます」
カバンをつかんで立ち上がり、
「おらトーイ。先いくぞ」
「あ、うん。待ってよ秋兄」
いつもと変わらぬ様子で家を出ていく。
その背中を見送ってから鈴音は、
「春さん」
不安そうに春一を振り返る。
ずっと一緒の食卓に座って、秋哉を観察していた春一だったが、
「まあ、もう少し様子をみてみよう」
そう言うしかなかった。
まだ何も起こっていない。
――まだ。
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