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エピローグ
秋哉と肩を並べて学校に戻る道すがら、
「アキは悪意も全部、自分の中に飲み込めちゃうんだね」
三嶋は半ば呆れながら言う。
すると秋哉は、
「なんだよ、それ」
無自覚なのかとぼけているのか、ぶっきらぼうに言いすてた。
追求しても、答えは得られそうにない。
だから代わりに、
「ねえ、今回は一体、誰が悪かったの」
聞いてみる。
すると秋哉は、
「悪いヤツなんかいねーよ。カズもあいつらのことはよく知ってるだろう」
中学のころの呼び方に戻って答えてくれる。
なんだかそれが、ちょっと嬉しかった。
しかし、嬉しいという感情と、納得出来る出来ないは別の話である。
実際三嶋は、安井にも目に見えない神部にも、悪意しか感じなかった。
しかしそうなった原因は、
「友だちだったもんね。急に神部さんにいなくなられて、安井ちゃんも、自分を抑えられなかったのかな」
まだ17年しか生きていない自分たちに、『喪失』なんて偉そうに語ることは出来ない。
だけど、これだけは確かに言える。
「あんたもいなくならないでよ、アキ」
秋哉はキョトンとした顔をして、
「は? いなくなるわけねーじゃん」
きっぱりと言った。
「まだ怪我のことを気にしてるのか? たいしたことねーって、こんなもん」
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