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3.ガブリエル(神の言葉を伝える天使)
一瞬だけ、春一が目を見開いたことが、秋哉の琴線に触れてしまったのか、秋哉は、それから何か考え込むように黙り込み、家に帰ってからもひと言もしゃべらなくなってしまった。
「秋哉、訳を話せ」
いつもなら絶対の家長の春一の命令だが、今回ばかりは効果はない。
物見遊山気分で帰ってきた夏樹が、
「どうせ、双子とか姉妹とか、秋が見間違えただけじゃねーの」
概要だけ聞いてチャチャをいれたのも悪かったのかもしれない。
そこへきて、
「夏樹、秋哉くんは怪我したばかりで疲れてるのよ」
あからさまに鈴音が秋哉を庇ってみせるものだから、兄弟たちは気に入らない。
冬依まで参戦してきて、
「秋兄じゃ、女の子が化粧でもしたら、もう顔の区別なんかつかないだろうしね」
「そういや、この間鈴音が髪切った時だって、秋だけが気づかなかったしなー」
やいのやいの言い出したものだから、すっかり自分の殻に閉じこもってしまった。
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