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画面の前に二人で並び、コントローラーを握る。
キャラクター選択をしながら、ちらりと大樹くんの横顔を伺った。
瞳は真っ直ぐ、口は真一文字に結んで。いつになく真剣な表情だ。
彼は今一世一代の賭けに出ている。
いいじゃないか。
たとえ欲しいゲームソフトのためだとしても。その勝負がテレビゲームだとしても。
「じゃあ、いくよ?」
「いいよ!」
任天堂のキャラクターが勢揃いしたスピーディーなアクションゲーム。
多彩な持ち技を駆使して攻撃し、最後まで舞台に残っていた者が勝者となる。
私は『ポケットモンスター』のピカチュウ、大樹くんは『ゼルダの伝説』のリンク。他、三体はコンピューターの自動操作だ。
店内に小さく、熱く響き渡る、カチャカチャというコントローラーの音。
ひとりふたりと脱落し、最後まで舞台に残っていたのはピカチュウだった。
「いい勝負だったね」
「ん」
「強かった」
「ん」
への字に曲げた口から出たのは、悔しさを胸のところで押し込めた声。
コントローラーをギュッと強く握ってから、静かに台へと戻す。
「・・・・・・次はさ、オレの圧勝だからなっ。和也と勇吾とさ、三人で、めっちゃ強くなるからな!」
「うん」
「スマブラとパワプロにする」
そう言った大樹くんの横顔は、照れたように唇を尖らせているのに、何だか少し大人びて見えた。
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