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夢の跡
何度も何度も巡る季節を繰り返し、都市は大きく便利に発展していく。
あの道の角にあった、子供たちの夢の国『おもちゃ屋ポプラ』。
ピエロと木馬のファニーな看板。
わんぱくで賑やかで、いつも何かに夢中になっていた子供たち。
私は横断歩道の向こうにある、やたらと駐車場の広いコンビニを眺めていた。
「懐かしいなぁ」
建物がなくなっても、ポプラの記憶がそう呟かせる。
あの時夢を見ていた子供たちの心にも、息づいてくれているだろうか。
角にあったおもちゃ屋さん。
変な店員ばっかりいたおもちゃ屋さん。
何でもいい。少しでも覚えてくれているなら本望だ。
贅沢を言えば、あのお正月の好戦のおかげで、お財布の紐が固くなっていればいいのだけれど。
ひらひらと雪が舞う空を仰ぐ。
見たこともないのに、大人になった彼らの得意げな顔が浮かびクスリと笑った。
ー完ー
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