おもちゃ屋ポプラ

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おもちゃ屋ポプラ

おもちゃ箱から飛び出す愉快なピエロと可愛い木馬。 その下には、葉っぱがついた木の棒を組み合わせたような飾り文字で、『おもちゃ屋ポプラ』の屋号がデザインされている。 新しい年の澄んだ冬空をバックに、そのファニーな看板は今日も夢いっぱいに笑っていた。 「店長!明けましておめでとうございます。うわ、けっこう積もりましたね」 「ひつじちゃん、明けましておめでとう。いやあ、年明け早々いい運動だよ」 「本当ですね。私も今手伝います」 店の前で雪かきに精を出していた羽鳥店長と挨拶を交わす。 彼は額に滲んだ汗を拭いながら「いいのいいの」と続けた。 「俺さ、雪かきしとくから、松下くんと開店準備頼めるかな?」 「わかりました。あれ?嶋田さんは?」 「嶋ちゃんはほら、新年会モードだからやる気ゼロ」 あはは、と笑う店長につられて肩をすくめて笑い、店舗の裏口へと向かった。 薄暗い照明の中、子供たちの登場をひっそりと待つおもちゃたち。 ここは夢が詰まった巨大なおもちゃ箱だ。 ぬいぐるみにラジコン、流行りのゲーム、キャラクターの玩具。開店前の『彼ら』を見ると、実家のクローゼットの奥に追いやられた幼い頃の思い出が頭を過り、少し切なくなる。 などと感傷に浸っていると、突然パチパチと天井の照明が点きだし、この時期特有のおめでたい和楽器のBGMが流れ始めた。
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