小さなデュエリストたち

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小さなデュエリストたち

初売りの広告を出しているとはいえ、ここは地域密着型玩具店。 大型店と違い、開店早々に雪崩れ込むお客様もなく、ゆったりとした一日が始まる。 ーーが。 気を抜いてはいけない。 私には、心弾ませ来店するであろう子供たちに無駄遣いをさせないという、身勝手な使命があるのだから。 そんな決意を試すかの如く、常連の少年達が賑やかに来店した。 「ひつじお姉さぁん、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」 少年達と挨拶を交わし、お正月の面白エピソードや武勇伝に耳を傾ける。犬ぞり体験をしてきたとか、書き初めが新聞に載った話題にはにこやかに頷いたが、家の屋根から庭の雪山へのダイブだけは危ないから、と笑いながらもやんわりと注意した。 「男の子だから元気なのはいいけどね」と、自分もかつてダイブしたことは伏せたまま、レジがあるショーケースの向こう側に回る。 ガラスのショーケースの一角を占めているのは、その勇猛果敢な男の子達に人気を博しているトレーディングカードゲーム、『遊☆戯☆王 オフィシャルカードゲーム』だ。 ゲームに必要なカードデッキはすでにみんな持っている。少年達が求めるものは、1パック五枚入り、百五十円で販売しているブースターパックと呼ばれるものだ。 憧れのレアカードを手に入れるためには、お年玉を使い込むこともいとわないだろう。 私はそれを危惧していた。 足元には、店長が正月の売れ筋として大量に仕入れておいた各種ブースターパックが詰まった段ボール箱が置かれており、不安を煽ってくる。 ああ、どうか全部売れませんように。
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