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最後まで足掻いて抵抗してみたけれど、この勝負は私の完敗に終わった。
もちろん私の言葉を素直に聞いてくれた子もたくさんいた。
ただ箱買いという夢のない買い方をしない代わりに、ひとパックずつ何度も購入し、その場でパックを開けまくるという事態を招いてしまう。
「百五十円です」という声が始終飛び交い、私たちはレジとショーケースを飽きるほど往復する羽目になった。
さらに子供たちはもちろんのこと、大人がお年玉代わりに大量購入していくという予期せぬ展開。気がつけば繁忙期に近い忙しさに追われてしまい、彼らがお年玉を有意義に使えているのかもわからない。
「ひつじお姉ちゃん、レア出ないよう。もう一回買う!」
「ううん・・・・・・。レアカードのためだけに買ってるわけじゃないでしょ?もう充分強化されたデッキじゃない?」
「だってぇ。みんな、持ってるんだよ?」
雪やけで真っ赤になった頬が膨れていく。
接客の片手間に話して説得出来るような、簡単な問題じゃない。
私が自身の子供時代と彼の想いを重ね合わせた時、まるで遅れてきたヒーローのようにあの酔っぱらいが颯爽と登場した。
「おう!兄ちゃんたち!レアカードに踊らされてんじゃねえよ。いいか、お前ら。真の決闘者ってやつはなぁ、手札への愛情と信頼・・・・・・そして戦略がすべてなんだよ!!教えてやるから、こっち来い!」
暑苦しく語った嶋田さんは、カードゲーム専用のテーブルがあるスペースへ子供たちを引き連れて行った。
ちらりと振り返って見せたウィンクは余計だが、今は彼に感謝しよう。
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