2人が本棚に入れています
本棚に追加
「大樹くん、二本にしようよ」
「えぇー」
「みんながくれたお年玉、大切に使おう?」
「だって、二本ってさぁ。選べないじゃん!!」
バタッと倒れ込むように顔を伏せる大樹。
わかる。
わかるよ、大樹。私だって元子供だもん。
大人になった今だって、我慢するのが辛いことなんていっぱいある。
大樹くんだけに戦わせるのはフェアじゃなかったね。
「よぉし、わかった!!ゲームしよう、大樹くん!」
「はぁ?」
「私が勝ったらゲーム二本まで。大樹くんが勝ったら欲しいの全部!どう?あれで勝負しよう!!」
私が示した指の先には、お店の一角にあるゲーム体験コーナー。
彼が欲しがっている『大乱闘スマッシュブラザーズDX』のオープニング映像が流れている画面を指差した。
大樹くんは店に来るたびに、この体験コーナーで遊んでいたのを知っている。「お年玉もらったらスマブラ買うから、みんなで対戦しようぜ!」とはしゃいでいたことも。
「ひつじ姉ちゃんと対戦?えぇー。だってさぁ、オレさぁ」
「男なら、ドーンと勝負しなさいっ!」
煮え切らない彼の、まだ小さな肩を両手で掴み揺さぶる。
「ああぁ、もう!わかったよ!!やるっ!」
「うん!そう来なくっちゃ。ーー松下くぅん!私、対戦でひと勝負するから、レジお願いね!」
シルバニアファミリーの『赤い屋根の大きなおうち』の向こうから、のっぽの松下くんがせわしなくお辞儀を繰り返して駆けて来る。
さあ!大人気ないけどこの勝負、勝たせてもらわなくちゃ!
最初のコメントを投稿しよう!