ひつじ VS 大樹

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「大樹くん、二本にしようよ」 「えぇー」 「みんながくれたお年玉、大切に使おう?」 「だって、二本ってさぁ。選べないじゃん!!」 バタッと倒れ込むように顔を伏せる大樹。 わかる。 わかるよ、大樹。私だって元子供だもん。 大人になった今だって、我慢するのが辛いことなんていっぱいある。 大樹くんだけに戦わせるのはフェアじゃなかったね。 「よぉし、わかった!!ゲームしよう、大樹くん!」 「はぁ?」 「私が勝ったらゲーム二本まで。大樹くんが勝ったら欲しいの全部!どう?あれで勝負しよう!!」 私が示した指の先には、お店の一角にあるゲーム体験コーナー。 彼が欲しがっている『大乱闘スマッシュブラザーズDX』のオープニング映像が流れている画面を指差した。 大樹くんは店に来るたびに、この体験コーナーで遊んでいたのを知っている。「お年玉もらったらスマブラ買うから、みんなで対戦しようぜ!」とはしゃいでいたことも。 「ひつじ姉ちゃんと対戦?えぇー。だってさぁ、オレさぁ」 「男なら、ドーンと勝負しなさいっ!」 煮え切らない彼の、まだ小さな肩を両手で掴み揺さぶる。 「ああぁ、もう!わかったよ!!やるっ!」 「うん!そう来なくっちゃ。ーー松下くぅん!私、対戦でひと勝負するから、レジお願いね!」 シルバニアファミリーの『赤い屋根の大きなおうち』の向こうから、のっぽの松下くんがせわしなくお辞儀を繰り返して駆けて来る。 さあ!大人気ないけどこの勝負、勝たせてもらわなくちゃ!
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