Laundry

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「まぁな」 気の抜けたような返事でスーツのまま洗濯機の前にいるモリを見て、懐かしさがぶり返す。 モリは家事全般をこなすのが得意だった。くわえ煙草で洗濯物を干すから、危ないって言い合ったことがある。 「ねぇ、長雨の割に洗濯物少なくない?私すごく溜めちゃって」 私が持ち込んだ洗濯物より断然少ないそれは、まるで一人暮らしみたい。 「一人だからなぁ、こんなもんだろ?」 小脇に抱えたカゴをテーブルに置いたモリと目を合わせた。 「え?」 混乱する頭の中で記憶の糸を手繰り寄せて僅かに震える唇を噛みしめる。 だって、あの時… 数ある洗濯ドラムの唸る音は聞こえない。 同じリズムで回り続けているはずのものすら、無意味なものに見える。 だって…あの時、だから… 今の悩みや苦しみがあの日の延長にある、とは言わないけど。あの日の決断が違うものなら、今の私はいないはず。 駆け巡るさまざまな思考を言葉に出来ず、モリが使った後の開け放ったままの乾燥の熱の圧が私を息苦しくさせる。
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