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「茉嶺……円香……。ホンマスマン……。カンニンしてや……」
「お父ちゃん、なんや臭うで? ちゃんとお風呂入ってないん?」
茉嶺の言葉に幣次は慌てて離れ、さっそくプレゼントのハンカチで溢れ出るものを拭いた。
「おおきに、茉嶺。こないええもん、世界中探しても売ってへんわ。なんぼぎょうさん金積んでも、手に入らへん、お宝や……」
再び潤んだ瞳を隠すように、幣次は深く頭を下げた。
「茉嶺、スマン。お父ちゃんアホやった。金に目が眩んで何も見えてへんかったわ。わざわざ世界中回らんでもこないええもんが毎年タダで手に入るなら、ずっと茉嶺の側におるわ」
「お父ちゃん、もうどこにも行かへん?」
「ああ、ずっと一緒や。これからはまた前みたく真面目に働く。ぎょうさん金稼いで、今度は茉嶺の誕生日に欲しいもんなんでもこうたる」
「ううん。ウチ、お父ちゃんがおってくれたらそれでええねん」
「茉嶺……。これ以上、お父ちゃんを干からびさせんどいでッ……」
こうして五年越しに茉嶺のプレゼントを受け取った幣次は、また親子二人慎ましく暮らしていこうと決意するのだった。
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