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ジャガ芋のような輪郭。トマトのヘタのような髪の毛。ゆで卵を割ったような目。ニンニクのような鼻。バナナのような口。黒ゴマをまぶしたような髭跡。
何度もクレヨンを変えては、真剣な表情で色を塗る幼女。
「できたぁ!」
嬉しそうに画用紙を掲げ、ユニークな顔とにらめっこをしていると、ガチャりと玄関のドアが開き、土で汚れた作業着とにっかぽっかを履いた男が入って来た。
「茉嶺! おるか!?」
その男は、画用紙に描かれた顔にどことなく似ていた。
ただ、満面の笑みを浮かべている似顔絵とは違い、その表情に余裕は無く、何かに追われて来たかのように汗だくになり血相も変わっていた。
「お父ちゃんおかえりぃ! 見てぇ、ウチコレ描いてん」
すると男は玄関の戸に鍵をかけるや、靴を脱ぐのも忘れ幼女の前に片膝を着き、その肩を掴んだ。
「おおお落ち着いて聞きや。大声上げたらあかんで」
「どないしたん?」
首を傾げる幼女に、男はおちょぼ口のまま囁いた。
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