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こうして幣次は、当選金を受け取るとその日のうちに借金を返済し、茉嶺を実家に送り届けるとあっという間に海外へ飛んだ。
「なんやあのどら息子。たまの正月に帰って来た思えばかわいい一人娘置き去りにしていきよったで」
「ホンマしょーもない子やわ。……あら、茉嶺ちゃん、なに持ってん?」
幣次の母はふと、茉嶺が厚手の封筒を手にしているのに気づいた。
「うわ!? 大金やないの! キレイな金なんやろうな!?」
「養育費のつもりかいな。円香さんを病気で亡くした矢先やのに、お前までいなくなってどないすんねんアホんだら……」
「お父ちゃん……」
祖父母が嘆く中、茉嶺は幣次が消えた広大な田園風景を、いつまでも寂しげに眺めていた。
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