第一章 千年時計

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 直江津は、失踪となった前日の記憶までしかなかった。 そして。最近、目覚めて、村に帰ろうと彷徨っていたらしい。 「御影屋を思い出しまして、私が喰った者を特定してから死にたいと思いまして……」  二十年前、生徒を喰って逃亡したと、他の者から聞き、 どうしても自分が喰った生徒を知りたいと思ったらしい。 「教師としては、生徒を喰うとは、やってはいけない事でしょう」  何があったのか分からないが、 直江津が今の状態ならば、確かに生徒を喰ったというのは信じられない。 「李下さん、どうするのですか?」 「今日は、話を聞いて、明日判断するよ」  直江津の記憶がないので、掟破りだと断定できないのだそうだ。
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