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『飼育少年~ベタベタしたいお年頃~』★777お礼
バイト上がりの時間、津田からメッセージが届く。
ちょうどこっちまで来てるから、一緒に帰ろうと言うことだった。
いつも落ち合ってるスーパーの入り口に行くと、ジャージ姿の津田がいた。
「珍しくね? ジャージ。大桑リスペクト?」
「違うよ。散歩」
「散歩? ウォーキングとかランニングでなく?」
「あれ、言ってなかった? 僕散歩が趣味って」
「や、それは知ってるけど、何で散歩にフル装備?」
「この時間に普通の格好でフラフラ歩いてると、不審者扱いされるから」
「あー、一応運動してます、って体を作ったと」
「そういうこと。あんまりこういうの似合わないと思うけど」
「いや、似合う似合わないじゃなくて、足の長さが丸分かりで、隣に立つ俺が辛い」
「えっ、そんなこと言わないで欲しいな」
ショボンとした津田に、笑いながら鞄から細長い紙袋を出してやる。
「ほら、これ食え」
「何?」
「焼き芋。さっき買ったばっかりだから、まだ熱いぞ」
俺の分も鞄から出して、食べ方を教えてやる。
「先っぽの方は固いから、ちぎって袋のなかにポイ。皮はお好みではいで食えばいい」
「こう?」
俺にならって、先端の固そうな部分をちぎると、津田は焼き芋にかぶりついた。
「あつっ!」
「気をつけろって言っただろ……」
「熱いけど、おいしい」
整った顔を子供のようにほころばせる津田に、俺は買っておいて正解だったと自分を誉める。
「さつまいもをこんなふうにして食べたことないけど、シンプルでおいしいね」
「だろ?」
「深山くんと一緒に食べてるから、更においしい」
ニコッと笑う津田の顔はそれはそれは幸せそうで、綺麗で……俺はうっかり見とれて真っ赤になってしまうのだった。
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