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この厄介なミッションは、面倒というより気分が浮き立つ感じで、僕は恋というものがどれほど自分の世界を変えるのか、改めて感じていた。
(……プレゼント、選んでみたけど、これでいいのかな)
僕はドキドキしながら深山君との待ち合わせた駅に向かう。今日はまだ深山君は来ていないようだった。
人混みの中に深山君の姿を探しながら、ゆっくりと視線を巡らせる。いい加減自分に向けられてくる視線には慣れてきたけれど、それでもうっとおしさを感じずにはいられない。
(早く来ないかな、深山君……)
ふっと視界の隅に何かが引っかかる。
「あ……」
自然に唇が緩んで、僕が見えるかどうかも分からないのに手を挙げて、大切な人の名前を呼んでしまう。
「深山君!」
僕の声に気がついて、 小走りにやって来る深山君はかわいい。死ぬほどかわいい。小鹿のバンビよりもずっとかわいい。ヤモリみたいなくるっとした目でタタタタと走って来るとか、卑怯すぎる。
「悪い、待たせたか?」
「大丈夫、僕も今来たところだから」
「てかお前、大声で名前呼ぶなよ、恥ずかしいな」
「ごめん、ついうれしくて」
「……馬鹿か」
ちょっと赤くなってぷいっと背を向けた深山君に、僕は慌ててしまう。
「気分を害したなら謝るよ」
「そういうんじゃねーし……ちょっと恥ずかしかったんだよ」
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