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振り返りながら、深山君はべーっと舌を出す。
「ほら、行くぞ」
「あ……うん!」
ちなみに今日のデートは僕たちらしく、少し遠くにあるベタを豊富に取り揃えている店に行くというものだった。
「なあ、津田って今日俺と遊び終わったらどうすんだ?」
「家に帰るよ」
「誰か家にいる?」
「いや、当然ひとりだけど」
当然のように言うと、深山君は大きくため息をついた。
「お前な……じゃあ、うち来い」
「え?」
「母さんが、予定がないなら来てもらえばって」
「……お邪魔じゃない?」
「お前のこと邪魔だなんて思ったこと、俺一度もないし、母さんだってお前のことお気に入りだぞ」
「じゃ、じゃあ、お邪魔してもいいかな?」
「よし、決まりな。そのかわりケーキ買ってこいって言われてるから付き合えよ」
「もちろん!」
僕は自分でもわかるほど弾んだ声をあげていた。
(深山君と一緒にクリスマスイブを過ごせるんだ……それに……)
恋人や家族で過ごす特別な日を、ひとりで過ごさずに済むというのは、何年ぶりだろう?
胸の内側に灯った温かなものを、僕はこの上もなく尊く感じていた。
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