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★50 お礼小説
「なあ、津田。ソフトクリーム食べたくないか?」
校門を出た俺は、ふとそんなことを言ってみた。
「ソフトクリーム……」
津田の瞳が眼鏡の奥でうっとりとした色を浮かべる。こいつは意外なほど甘い物が好きなんだ。
「いいね。でも、このへんで食べられるところってある?」
「コンビニであるぞ。ちょっと遠回りになるけど寄っていかね?」
「もちろん!」
「確か期間限定でいろんな味があるんだけど、今なんだろう?」
「調べてみようか」
津田はスマホを取り出し、俺が名前を挙げたコンビニを検索する。
「今は……チョコレートみたいだね」
「お、いい感じ。俺ミックスいっちゃおうかな」
「……」
「あれ? お前チョコ味きらい?」
「そういうわけじゃないけど……2月だったら良かったのになって思って」
「は?」
「そうしたら、君にごちそうすれば、バレンタインのチョコあげたことになるのにな」
津田の言葉に俺はブッと吹き出してしまう。
「お前、結構乙女チックなこと考えるんだな」
「やっぱり変かな」
「……ばか、2月になったらちゃんとお前にチョコやるから」
そう言った途端、津田の顔がぱあっと輝く。お前、わかりやすすぎるだろ……。
「楽しみにしてるよ」
だからやめろ……そのイケメン全開の笑顔。見てるこっちが恥ずかしくなるんだってば!
「僕からも深山君にチョコ送っていい?」
「……おう。でもお前気をつけろよ。チョコ売り場、女ばっかりだからな。お前みたいなのがいたら、死ぬほど目立つからな」
「でも、深山君のためなら、絶対おいしいチョコ探してくるよ」
あーもー、こいつかっこいいのになんでこんなにかわいいかな?
「とにかく、今日はソフトクリームの気分だから行くぞ!」
「うん」
津田はほんの少し迷ったような表情を浮かべてから、俺に手を差し出す。
「手、つないで行かない?」
「バレんだろ、ばーか」
「そうだよね……じゃあ」
津田は手袋を片方外すと俺に差し出してきた。
「これしてよ。気持ちだけでも深山君と手つないでいたい」
「お前恥ずかしい奴だな……」
そう言いながらも俺は手袋をする。津田の手袋には、津田の温もりが残っていて、あいつの言葉のせいか本当に手をつないでいるような気分になってしまう。
あーくそ。こいつといるとなんでこんなことでくすぐったいみたいな幸せな気分になるんだろうな。
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