チャプター1「休憩同好会」

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チャプター1「休憩同好会」

 2018年5月7日、桜が散ってそろそろ夏が来そうな季節。新星ヒロは決断を迫られていた。 「だから先生、僕どの部活も興味ないんですってば」  ヒロは苛立つ口調で教師に言う。その言葉に教師はまたかとため息をついた。  ヒロは今、放課後の教室に残されて教師に「部活に入れ」と説得されているのだ。 「何言ってるんだ。少しでも興味のある部活はあるんじゃないのか?」 「それが……何も興味持てないんです」  嘘はついていない。本当にヒロは心から興味の持てる部活を見つけられなかった。 「それにどこかしらに入っておけば、学校生活も充実するし……」 「でも興味はないんですよ?」  確かに、どこかの部活に適当に入れば済む話だし、学校生活も充実するかもしれないが、その充実に楽しさはないだろう。 「このクラスで部活に入っていないのはお前だけなんだぞ?」  教師はなんとかヒロを部活に入れようと躍起だ。 「そうは言いますけど、別にクラスに1人ぐらい無所属がいたって誰も困らないじゃないですか」 「お前なぁ……」  教師はもうだめだと頭を抱えた。  事の発端は約2週間前に遡る。  この春晴れて県立桜内高校に入学したヒロは入学式から数週間経った頃から、担任の教師から「部活に入っていない生徒」だからと目を付けられるようになった。  県立桜内高校は県内の高校の中でもとりわけ部活に力を入れている学校だ。  そのため、「部活は学業と同等の価値があるもの」という考えが学校運営方針の根底にある。  それが理由で教師は生徒に部活に入ることを必死に促すのだ。  決してそれはヒロも例外ではなかった。 「とりあえず、明日までに何処かの部活に入るようにしておけよ! 俺の教科の内申点下げるからな!」  教師は適当な脅しをして、教室から去った。 「内申下がるのは流石にまずいなぁ……」  ヒロはため息をつきながら、机から立ち上がる。 「今日が最後だ。部活見学行こう」  ヒロはそう無理矢理心に決め、教室を後にした。
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