転校生

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転校生の周りに女子が群がっている。 「ねぇどこから来たの?」 「お家どこなの?」 きゃあきゃあの間で、転校生がニコニコしている。 「うるさいなぁ」 「女共は新しいモノが好きだからな」 いつも冷静な竹ちゃんが答える。 「いいおもちゃが入ってきたんじゃねぇの」 学級委員の小山さんの声が響く。 「いっぺんに話しかけたらわかんないでしょ! 守山君困ってるじゃん!」 それを聞いた女共が、何故か手を上げて質問を始めた。 アホか。 困った顔でニコニコしていた転校生が、助けを求めるみたいにこっちを向いた。 一瞬目が合って、また下を向かれた。 あれ?  「気にいらねぇな」 クラスで一番体の大きいエノヤンが転校生を睨んでる。 「え? あいつがモテるから?」 お調子者のキノピーがからかう。 顔をたちまち真っ赤にしたエノヤンが噛み付いた。 「ちげー! あんな細くてさ、女みてーじゃん! 気持ち悪いんだよ。 しかもランドセルじゃないじゃん! 何だよカッコつけちゃってさ」 エノヤンは空手と柔道の道場に通ってるゴリラタイプの筋肉バカだから、 転校生みたいなタイプは気に入らないのかもな。 と、思っても口にはしない。 羽交い絞めにされたら敵わないもん。 子供だって、長いモノにはグルグル巻きなのだ。 「あいつ、いつかシめる」 その声が聞こえたのか、転校生がまたこっちを向いて、目が合って下を向いた。 ……? 「はい、席着いてー! 教科書出してー!」 クソババァの声が響いて、3時間目が始まった。
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