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給食のクリームシチューの匂いがまだ教室に残る五時間目、
気付いたら転校生がいなかった。
ランドセル代わりのカバンもない。
「先生、守山君どうしたんですか?」
しっかり者の小山さんが手を上げた。
「守山君は事情があって、午後は帰っちゃうのよ」
クラスの女子から「えーっ?!」と声が上がる。
「母ちゃんが恋しいんじゃねぇの?」
エノヤンの言葉に、女子たちの冷たい視線が刺さる。
「な、な、な、なんだよぉ……」
筋肉ゴリラも、大勢の女子には勝てない。
「60ページ、清水さん読んで」
窓から吹いてくる気持ちの良い風が、清水の声を押し流す。
晴れ上がった空に、もくもくの白い雲が流れてく。
今日のおやつはクリームパンがいいなぁ。
早く終わらないかなぁ。
「高野、次読んで」
ビックリして振り向くと、クソババァがニヤリと笑った。
ちっ。
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