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「ちょっとぉ! ちゃんと最後まで掃除してってよ!」
「女子の方がきれいになるよー」
小山さんの声を背中に聞きながら、皆で教室を飛び出す。
カカトが潰れたスニーカーに履き替えて、校門を駆け抜け、土手へ向かう。
ランドセルを放り出し、ダンボールを拾って歓声を上げながら土手を滑り降りる。
顔に当たる風が最高に気持ち良い!
風を切るってこういう事かなぁ。
オレより背の高い雑草の匂いがする。
何度も滑っては土手を駆け上がり、息を切らしながら滑る。
楽しー!
汗びっちょりだ、暑ぃ。
のどが渇いて水道で水を飲んでいると、土手を全速力で駆けてくるヤツがいた。
白くて細い足。
「太一!」
転校生?!
何だ? おじさんに追いかけられてる。
一生懸命走っているけど、大人にかなう訳もなく捕まってしまった。
何か大声で話していて、でも最後には静かになって、
走ってきた道をおじさんと一緒に戻り始めた。
お父さんかな?
一瞬こっちを振り向いた転校生と、目が合った。
……気がした。
何だか泣いた後みたいだった。
見ちゃいけないモノを見てしまったようで、そのまま見送った。
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