熱界雷《ねつかいらい》

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笑いながらそう言う喬史に、ひどいな、と自分も笑いながら遥輝はグラスの酒を(あお)った。 カウンター席のぼんやりと暖かい灯りと、低いジャズの調べが心地(ここち)よい。 ここのところ研究室にこもることが多くて、自分は少し疲れているのかもしれなかった。 アルバイトに明け暮れていた森山周がこの春に大学を卒業して、「兄貴分」だった喬史も、その友人だった遥輝も、何となく肩の荷が下りたような気がしていた。 もちろん、当の本人は相変わらず飄々(ひょうひょう)としていて、そんなことを気にしてはいない。 「遥輝、お前もう、周から手を退()け」 突然、喬史の低い声がして、遥輝ははっとした。
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