頑張ってるトナカイさんにご褒美。

1 今年こそ

　「ルドルフ　ズィ　レッノーズ　レインディア　ハダベリシャイニーノーズ　♪」

　トーコはいたくご機嫌だ。

　お得意の『赤鼻のトナカイ』を日本語英語で口ずさみながら、七面鳥の丸焼きの焼け具合を確かめるべく、オーブンレンジを覗き込む。

　お、中々の出来栄えじゃないの。

　ニンマリと微笑むとトーコは、再び鼻歌を再開し、ケーキのデコレーションをはじめた。

　結婚2年目のクリスマス。

　新婚さんだった去年。
　忘年会続きの彼にたまらなくなり、家出をしてしまったトーコは、初めてのクリスマスを愛する旦那さまと過ごすことが出来なかった。

　そのため、『今宵こそは』との気合いは半端でなく、やりすぎるくらいに張り切っていた。

「よーし、出来上がり、っとぉ！」

　オーブンから、丸焼きを出すと、フンフンと香りを吸い込んで、鉄板ごとテーブルの真ん中に設置する。
　絶対に二人では食べきることが出来ないであろう品数が、すでにテーブルから落ちそうなほど並べられていた。

　そして、雰囲気づくりもばっちりだ。
　キッチンの特大ツリーはもちろん、玄関先まで電飾を伸ばしたもんだから、家中が鬱陶しいほどチカチカと光っている。