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康子は、しょっぱなからの違反に溜息をついた。これが今日一日、持ち帰られなかったら、帰って私が分別するのよね。本当に、何で私が他所のお宅のゴミを分別しなければならないんだろう。どこの自治会にも、非常識な人っているのね。そんなことを、ぼんやりと考えつつ、ゴミステーションにそのゴミ袋を置いていると、何か、ガサガサという音がして、康子は振り向いた。
ガサガサ....ガサガサ....
えっ?何?
すぐ後ろの黒いゴミ袋の中で、何かが蠢いている。
ウソッ、何か、入ってるの?
康子の心臓は、バクバクと音を立てて、その場に康子は固まってしまった。
ガサガサ...ガサガサ....
まだ袋の中で何かが蠢いている。
ま、まさか!
康子の脳裏に真っ先に浮かんだのは、赤ん坊だ。
もしや、だれかが生まれたばかりの赤ん坊を...。
「大変!」
固まっていた康子の体は、とっさに動いた。
震える手で、固く結ばれた黒い袋の結び口を解く。
「ううっ!おええええ!」
袋を開けた瞬間、康子の鼻腔を強烈な腐臭が襲った。
その腐臭の元は、袋の中の新聞紙に包まれた何かだった。
しかし、先ほどまであれほどガサガサと蠢いていた袋は、康子が開けたとたんに、動きを止めた。
その代わりに、とてつもない腐臭があたりに漂った。
「なにこれ...。」
康子は耐え切れず、すぐに袋を閉じた。
どうしよう、これ。
別に、中を見たわけじゃないけど、これは今まで嗅いだ事のないような臭いだわ。
何か、肉が腐ったような。
そこまで考えると、康子は、あらぬ想像が頭の中を駆け巡りパニックになってしまった。
「見なかったことにしよう。」
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