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結局、康子は、その結論に至った。
しばらくその袋を見つめていたが、もう全く蠢くことはなかった。
なんで、あの袋はあんなにガサガサ動いていたんだろう。
「き、きっと気のせいよ、気のせい。」
康子は自分を無理やり納得させると、そそくさと片付けて、自分の家に戻った。
その日、康子は、パートの仕事から帰って夕飯の支度をし、帰宅してきた夫に、朝の話をするべきかどうか悩んでいた。どうせ一笑に付されて、お前の気のせいだと言われるに違いない。そう思い、康子は朝の事は、忘れることにした。
その日夜、康子は悪夢を見ていた。黒い袋がガサガサと蠢き、康子はまた恐る恐る、その袋を開ける。すると、その中から、真っ黒に焼け爛れた手が出てきて、康子の腕を掴んだのだ。
「ひぃぃぃぃ!」
康子は、叫びながら、飛び起きた。慌てて、隣で寝ている夫を見たが、高いびきで寝ていたのでほっとした。
「夢か...。」
次の日の朝、一階エレベーターホールで何人かの主婦達が井戸端会議をしていた。出勤のため、その横をおはようございますと挨拶をして、康子が通り過ぎようとすると、お隣の水谷さんに呼び止められた。
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