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結び付けてはならないはずなのに、どうしても康子の脳からその疑念が離れない。
田中さんの旦那さんって、でも、すごく人の良さそうなおじいちゃんだったわよね。
まさか、まさかね...。
それから、数日後、田中さんのご主人に出会ったので、奥様の安否を尋ねてみた。
「いいえ?家内は行方不明になどなっておりませんよ。家内は、今、友人と旅行に出かけております。」
意外な答えが帰ってきた。おかしい。確かに、水谷さんは、奥さんは行方不明でご主人が捜索願を出したと言ったのだ。変ね・・・。
ゴミの日に、ゴミ捨て場の清掃をしていた康子の元に、水谷がゴミを捨てに来たので、それとなく、ご主人から聞いた話を水谷にしてみた。
「おかしいわよね。何故、ご主人は、奥さんの失踪を隠すのかしら。」
水谷が眉をしかめた。
その時、康子の後ろで、またあの音がした。
ガサガサ....ガサガサ...
まただ。黒いゴミ袋がうごめいている。
とっさに康子は、後ろを振り向いて、そのうごめくゴミ袋を見つめた。
「あら、どうしたの?橋本さん。」
「あの、黒いゴミ袋が...動いてません?」
「えっ?」
水谷も、康子の視線の先に目を向けた。
「やだ、何も動いてないわよ?」
嘘だ。ほら、今もガサガサと黒いビニール袋がうごめいている。
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