『春』のない世界

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私達の世界で語られる『神話』をご存知でしょうか。 この世界には四季を宿す四本の世界樹と呼ばれる生きとし生けるもの全てに恵みを与える天へと続く樹があります。 それぞれの世界樹には神様から選ばれた人から成りし『魔女』と呼ばれる存在がいます。 彼女達は、生まれながらに魔女として生を受けるのです。 魔女は生まれながらに魔女なるべく生まれた存在ですが、彼女達が魔女であることを自覚するのは、来るべきの「その時」が来たときです。 それまで、人の子としての生を享受します。 しかし、その時が来た魔女に人の子として生きることは叶わず 命尽きるその日まで魔女として生を全うしなければならないのです。 ある1人の魔女は言いました。 「どうして私達は、お家に帰っちゃいけないの?」 「それは、私達が『魔女』だからだよ」 そう囁いたもう1人の魔女の真意を知るものは、いませんでした。 魔女は、その永すぎる一生を世界樹が成す巨大な樹の根元で暮らします。 魔女には、その地を守る役割があるのです。 永すぎる命をもつ魔女ですが 永遠の命では、ありません。 生きとし生けるものとして生を受けた以上、終わりはあるのです。 魔女は命尽きる、その時 はじめて涙を流します。 その涙が世界樹の根に触れ 世界に大きな恵みをもたらすと言い伝えられています。 何十、何百年と生きる魔女は永い命のその果てに生を終えるのです。 そして、神より選ばれた新しい『魔女』がその地を守るのです。 脈々と受け告がれ世界を作る。 それが、この世界の理なのです。 しかし、その世界樹がどこにあるのか 魔女が果てにどこへ向かうのか それは誰も知りません。
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