初恋、そして封印-2

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向きを変えた私の頭上で、大輪の花が夜空に開いた。 人々が一斉に空を見上げ、大歓声がわき起こる。 ようやく花火が始まったというのに半泣きで会場を後にする人間がいたって、誰も気にはしない。 押し込んだはずの前髪がまたトサカのように額に垂れてきたのも放置し、花火を見ることもなく、手にしたジュースを飲むこともなく、項垂れてひたすら夜道を歩く。 浴衣と合わせて新調した真新しい下駄の鼻緒が足の指にこすれ、靴擦れができた。 もしかして早くから靴擦れになっていたのに、気分が高揚していたから気づかなかったのかもしれない。 今は一歩踏み出すごとにひりひりとした痛みが足を刺した。 家の近くの神社まで帰ってくると、会場の喧騒が嘘のように人気はなく、散発的に続く花火の音だけが神社の木立と静かな家並みにこだましていた。
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